カンタータプロジェクト:小沼和夫

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カンタータプロジェクト2019

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# by TheSonicBird | 2018-11-25 13:40 | Trackback | Comments(0)

[動画]シンフォニエッタ福岡室内楽シリーズ vol.3 - 抜粋



# by TheSonicBird | 2018-11-25 13:40 | ● 録音・録画 | Trackback | Comments(0)

[動画]パーセル:歌劇《ディドトエネアス》組曲



# by TheSonicBird | 2018-11-25 13:28 | ● 録音・録画 | Trackback | Comments(0)

カンタータ第131番第1曲:古語とリズム

 ドイツ語の単語にも他国の言語と同様、現代語と古語があります。現代語には存在しないまったくの古語もありますが、中には語尾が1文字異なるだけとか、"s" や "f" や "t" などの文字が、ダブルかシングルかの差だけなどという、紛らわしい単語もあります。カンタータ第131番第1曲の冒頭では、この古語の問題が複雑に絡み合っています。


 バッハのカンタータは歌詞の冒頭を、曲全体のタイトルにしています。ところがこの曲には以下の、微妙に異なる二種類の題名が使われています。


BGA(旧全集)とその周辺=現代語(19世紀)

"Aus der Tiefe rufe ich, Herr, zu dir"


NBA(新全集)とその周辺=古語

"Aus der Tiefen rufe ich, Herr, zu dir"


 "Tiefe"の語尾に"n"があるかないかの差です。一見大した差ではないのですが、歌ってみるとどちらでもかなり違和感を感じる部分です。というのも"-fe"の音節が第1拍の裏の裏の16分音符から始まっているからです。つまり本来アクセントの無い、語尾の音節が極端なシンコペーションで書かれているのです。

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 どちらかと言えば音楽的には"Tiefe"のほうが、私には自然に感じるのですが、バッハ時代の古語は"Tiefen"だそうです。そこでもう少し検索してみると面白いものが出て来ました。自筆譜です。

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 "f"がダブルで"ff"になっています。一種の促音ですね。これだと確かに「第1拍の裏の裏の16分音符」が活きて来ます。ルター訳の1545年版の聖書では、この綴りになっているのだそうです。つまり「本当の古語」は次のようになります。バッハの自筆譜もこれで書かれています。


"Aus der Tieffen / ruffe ich Herr zu dir"


 "rufe"も"ruffe"になっています。これもアウフタクトに置かれているときは、軽く跳ねて強拍の"ich"にうまくタッチダウン出来るのでロジカルですね(ruffe が ruff'になっているのは、字余りの省略です)

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 この問題は「どの歌詞が正しいか」という問題ではなく、「どの歌詞で歌うのが音楽的か」という問題のようです。


 では何故、新全集が"…Tiefen rufe…"で出版されているのかというと、聴き慣れない"… Tieffen ruffe …"を聴いた聴衆が、演奏団体の発音が間違っていると勘違いするのを避けるためではないかということです。

 たしかにカンタータの演奏会ともなると、ドイツ語を話せるお客さんもかなりいらっしゃると思います。プログラム(パンフレット)に一言、但書きを入れておいたほうが良いでしょうね。


# by TheSonicBird | 2018-11-10 21:45 | ● バッハの不思議 | Trackback | Comments(0)

カンタータ第12番第2曲(前半)練習の手引き

 ここに書かれていることは、あくまでも「私(小沼)は、こう演奏する」という、カンタータプロジェクトの声楽アンサンブルメンバーに宛てた内容です。一般論ではありませんので、その点はご了承ください。


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 非常に多くを語られている作品なので、演奏上の技術的課題についてのみ記します。


 調号はフラット3個ですが、ハ短調ではなくヘ短調です。これは「ドリア記譜」あるいは「ドリア式記譜」と呼ばれるもので、調性確立以前の時代、旋律線の円滑化と若干の終止効果を狙ってムジカ・フィクタ(一種の臨時記号)が付けられたドリア旋法(第1旋法)と、ニ短調の旋律的短音階とがまったく同じ音になることから、あえて調号を付けずに記譜されていたことに由来する記譜法で、フラット系の短調で調号のフラットを1個少なく記すものです。短調では臨時記号は必須なので、その分の調号を予め省いておいても、臨時記号の数は変わらないか、むしろ減るという発想です。「ハ長調より変ニ長調のほうが弾きやすい」などという楽器奏者がいなかった時代の記譜法ですね。

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 この曲で最初に現われる2小節の旋律的断片は、各パートとも3分の2拍子で数えて2.5拍+半拍+1拍です。しかし下記のように、2個の四分音符にスラーが付くことが想定される音型のため、実質「3拍+1拍」の音型と考えて問題ないでしょう。

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 以下、ソプラノの最初の2小節を例に説明しますが、他のパートでもまったく変わりはありません。

 最初の3拍は、約2:1のメッサ・ディ・ヴォーチェで歌われます。測ったように2:1にする必要はありませんが、重要なのはむしろ声質です。しっかり頭声のパーセンテージの高い声で始め、再び頭声のパーセンテージの高い声で終わるという、メッサ・ディ・ヴォーチェのセオリーをしっかり守ってください。間違っても張った声で歌い、「クレッシェッンド・デクレッシェッンド」に聴こえてしまうなどということはないようにします。そして歌い始めには母音の実体とは別に、分離した子音が存在します。

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 メッサ・ディ・ヴォーチェの頂点は2小節目の第1拍です。正確である必要はありません。ただし遅れれば減衰の時間が足りなくなり、クレッシェッンドになってしまいます。そして息を立ち上げて歌う以上、遅れは出やすいのです。それを避けるためには、第1拍より少し前を狙っておくことが薦められます。

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 この楽句で誤解しやすいことは、フレーズ全体を一つのスラーと考えてしまうことです。そしてフレーズ全体をメッサ・ディ・ヴォーチェで歌ってしまうと、それはメッサ・ディ・ヴォーチェではなくなり、クレッシェッンド・デクレッシェッンドになってしまいます。

 最後の二分音符は、アーティキュレーション上は独立した1音符で、歌い直されるべき音符なのです。

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 上記を含めて、どの音符にスラーを付けて歌うかについては、次のように考えます。まず「楽譜に記されているスラーはあくまでも音節表示のためのものであり、直接アーティキュレーションに反映されるものではない」という原則を前提として無視します。そして2音符を上限として、非和声音の解決が音節を跨いでいない場合のみ、スラーを付けてください。


ⅰ.1音節内の2音符で解決する上方掛留,及び倚音はスラーとする.

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ⅱ.2音節以上を要する解決,並びに刺繍音を伴う掛留音の解決にはスラーを適用しない(譜例にはないが,経過音もスラーを適用しない).このような場面にスラーを適用すれば,流れが解決していない状態の非和声音で終了することになる.

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 スラーの開始音と第2音との関係は、「長短」、「強弱」であることは言うまでもありません。


 以上が組み合わさって、抑揚が喰い違うことにより、立体的なポリフォニー音楽が聴こえてきます。

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 前半部唯一のホモフォニー部分25~32小節のうち、25~28小節は属七の第三転回から主和音の第一転回への解決を繰り返しつつ3回の転調を行なうという、非常に不安定な部分です。

 この部分で重要なことは、"Angst und Noth"の歌詞の3回の繰り返しが、明確な形で畳み掛けられること、それでいて不安げに浮遊するような表情であることの二点です。


 畳み掛けると言っても"Angst"と"und"では次の小節の1拍目に向かって推進するリズム感で歌い、"Noth"では停止して一瞬安定します。

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 進行→停止の音型は「ディミヌエンド型」が多いのですが、ここでは第1拍がしっかりと強拍になり、各音符異なる大きさの波を歌い分けます。

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 各小節第1拍"Noth"は、停止感を伴って区切りを入れます。このときに区切りを入れるために第1拍が短くなると、せわしない動きになってしまいます。その際、第1拍の音価はそのままに、切れ目の分だけ小節全体の長さが延びる、あるいは第1拍にごく微細なフェルマータがあるように感じると、音楽に落ち着きと微妙なニュアンスが生じます。ただし譜例ほど明確に実行すると音楽の性格が変わってしまうので、いわゆる「気持ちだけ」という程度で実行してください。

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 33小節以降の各パートの歌い出しは、前述のようにスラーを適用しません。最初の3拍音符をメッサ・ディ・ヴォーチェで歌った後、次の小節の第1拍まで各音符を歌い直します。

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 35小節以降、2個ずつの四分音符計4個に対して付けられた"Angst und"のスラーは、そのまま生かします。この2音符ずつは「強弱」と「長短」の関係にあります。

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 BWV12第2曲前半("Un poco Allegro"の直前まで)は、後期バロック特有の極端なアーティキュレーションを含みながらも、全体の雰囲気としてはルネッサンスのア・カペラ曲のように聴こえるよう留意してください。



# by TheSonicBird | 2018-11-06 20:00 | Trackback | Comments(0)

現代から遡って過去の作品に至るのではなく、ルネッサンスから下って来てバロックや古典に至る。それが私の視点です。そのために自分の感性や人格を改造し続けています。その過程に共感していただければ幸いです。


by TheSonicBird
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